「世界の主要キャリアで唯一、1つの料金プランしか出さない。将来的にも出す予定がない」
三木谷浩史会長兼社長
この記事では「楽天モバイルの安さの秘密」について徹底解説していきます!
先着300万人については「1年間無料」、月額料金は「2980円」、インターネットは「使い放題」、国内通話も「かけ放題」という、今までの常識を打ち破る料金プランに誰もが驚きましたよね。
実際、発表直後は申し込みが殺到し、公式サイトにも繋がらなくなっていました。
皆さんの中には
「料金が安すぎて不安、何か裏があるのでは?」や「どうせ安かろう悪かろう、でしょう?」といった考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこまで否定的でないにしろ、「なんでここまで安いの?」「待ってたら他のキャリアも安くなるのでは?」と考えている方もいらっしゃると思います。
ということで、楽天は「なぜ2,980円でここまでのサービスを提供できるのか?」 「なぜこんなキャンペーンが出来たのか?」 「他社(大手)ではなんで出来ないの?」に焦点を絞って解説していきます。
目次
楽天モバイルの安さの理由
楽天モバイルには、安く「しなければならない」理由と、それを支える仕組みがあります。
まずは安さの理由について、大きな要因を3つ紹介しましょう。
- 他MNOと目的が違う
- 完全仮想化ネットワーク
- 基地局の数が少ない
では、ひとつひとつ見ていきましょう。
他MNOと目的・体質が違う
ドコモといえば?auといえば?SoftBankといえば?
今までのMNOが提供するサービスの核はやはり「スマホ」であり、その他のサービスはスマホ利用者の単価アップ商材(ARPU商材)といっても過言ではありません。
楽天といえば?
楽天は、「楽天市場」というAmazonに次ぐEC通販サービス、「楽天カード」や「楽天Edy」などの金融関連サービスなどを中心とした「楽天経済圏」と呼ばれる、グループ内に回遊性を持たせるビジネスモデルを持っています。
ですから、楽天モバイルの目的はあくまでも「楽天経済圏の強みを強化する」ことであり、スマホ事業に全振りしているような他MNOとは根本的に体質が違います。
結果、企業として割けるリソースも変わってきますので、他MNOとの差別化として「価格」で勝負しているのです。
完全仮想化ネットワーク
楽天モバイルの安さの秘密として、楽天モバイル公式で挙げられる表向きの理由としては「完全仮想化ネットワーク」が一番大きいでしょう。
完全仮想化ネットワークによって、既存のMNOと比較し「設備投資は40%、運用コストは30%削減できる」と言われています。
通常、アンテナ1本の設置や維持費だけで億単位の金額が必要となっていることを考えると、とても大きな話しでしょうね。
※2018年の8月に、菅官房長官が「携帯料金は4割下げられる」と断定しましたが、その根拠の一つとなっているようです。
基地局の数が少ない
楽天モバイルはまだ参入直後ですし、企業として割けるリソースも他MNOとは大きく変わってきます。言い方を変えると、まだまだ圧倒的に規模が小さいのです。
まずは下の表をご覧ください。
キャリア | 合計 | 700MHz帯 | 800MHz帯 | 900MHz帯 | 1.5GHz帯 | 1.7GHz帯 | 2.0GHz帯 | 2.5GHz帯 | 3.5GHz帯 |
ドコモ | 202,400 | 6,700 | 68,000 | - | 26,200 | 17,400 | 70,000 | - | 14,100 |
au | 119,100 | 6,800 | 56,500 | - | 10,500 | - | 39,800 | - | 5,500 |
SoftBank | 126,500 | 4,800 | - | 48,400 | 5,800 | 14,500 | 39,300 | - | 13,700 |
UQ | 63,000 | - | - | - | - | - | - | 63,000 ※BWA | - |
楽天 | 4,700 (2020.04) | - | - | - | - | 4,700 | - | - | - |
キャリア | 合計 | 700MHz帯 | 800MHz帯 | 900MHz帯 | 1.5GHz帯 | 1.7GHz帯 | 2.0GHz帯 | 2.5GHz帯 | 3.4GHz帯 | 3.5GHz帯 |
ドコモ | 240MHz | 20MHz | 30MHz | - | 30MHz | 40MHz | 40MHz | - | 40MHz | 40MHz |
au | 190MHz | 20MHz | 30MHz | - | 20MHz | 40MHz | 40MHz | - | - | 40MHz |
SoftBank | 220MHz | 20MHz | - | 30MHz | 20MHz | 30MHz | 40MHz | - | 40MHz | 40MHz |
UQ | 50MHz | - | - | - | - | - | - | 50MHz | - | - |
楽天 | 40MHz | - | - | - | - | 40MHz | - | - | - | - |
楽天モバイルが、移動体通信事業者としては、他社と比べていかに局地的なサービスを展開している企業か分かると思います。
楽天モバイルは基地局数が4,700。割り当てられた電波帯域も合計40MHz分しかありません。
やはり圧倒的なドコモと比較すると、楽天モバイルは少し不安になる数量ですね。
とはいえ、WiMAXでお馴染みのUQも割り当てられた電波帯域は合計50MHz分しかありませんし、アンテナの数が多いのは高周波数のWiMAXは電波障害が多いことに起因しています。
少し不安になる話しをしましたが、アンテナはこれからどんどん増えていく訳ですから、今はむしろ「よくここまで設置したな」と拍手したいところです笑(何様?)
当然のことですが、小さな規模であれば投資額も抑えられる。結果、月額料金も安くていいわけですね。
1年無料キャンペーンの理由
上記でも説明しましたが、楽天モバイルは「安さによって他MNOと差別化」を図っています。
また、他キャリアでも部分的な仮想化は進められているが、完全仮想化ネットワークは世界的にも初めての仕組みで、通信ネットワークのターニングポイントになると思います。
しかしながら、
アンテナはまだ設置中で、与えられている周波数帯が40MHz分しかないことに変わりはありません。
控えめに言っても、大手MNO3社と同じ土俵で戦える状態ではなく、非常に限定的なサービスと言わざるを得ないでしょう。
だからこそ
「先着300万人までは1年無料」という「先行投資」を行い、エリア拡大が落ち着く予定の2021年まで、利用者の不満を抑えてを乗り切ろう!という内容になっているわけです。
「300万人×2,980円×12か月」ですから、実に1072.8億円もの先行投資となっているわけですね。
これは筆者の独断と偏見ですが、こういった大きな施策には「ノリ」と「勢い」も必要です。ですから、理由を挙げるのであれば、三木谷氏の「思い付き」も多分にあると思います笑
※そんなことなかったらすみません。
モバイル通信の仕組み
楽天モバイルの安さの理由に迫るためには、完全仮想化ネットワークの仕組みを知る必要があります。
しかし、完全仮想化ネットワークを知るためには、モバイルネットワークの仕組みを知る必要があるため、順番に解説していきます。
安さの理由はもういいよ、楽天モバイルのことを教えて!という方は、以下の記事で分かりやすく解説しています。参考にしてくださいね。
では、続けていきましょう。
モバイルネットワークでは
スマートフォンなどの端末と、アンテナや基地局などを備えた「無線アクセスネットワーク」が電波を通じて無線で通信します。この電波の種類(世代)を3G、LTE、4G、5Gと呼称するわけです。
そして、その情報が「コアネットワーク」に送られ、処理されることでインターネットに接続したり、他社のネットワークと接続して音声通話をしたりする仕組みになっています。

郵便をイメージすると分かりやすいかもしれません。
男性が女性へ手紙を出すと(電話すると)、一度最寄りの大きい郵便局(交換機)へ集められ、女性の最寄りの大きい郵便局(交換機)へ届き、女性へ手紙が届く(電話がくる)という仕組みですね。
完全仮想化ネットワークとは
上述したモバイルネットワークの仕組みは、本当に簡単にまとめたものです。
本当は設備や機器がものすごくたくさんあります。
そして今まで、
アンテナなどの「無線アクセスネットワーク」や、交換機などの「コアネットワーク」に用いられる設備は、「それぞれ専用のハードウェアが必要」でした。
その専用のハードウェアを外注企業から購入し、専用のソフトウェアをセットアップすることでシステムを作動させていたのです。
このハードウェアが非常に高額で、今まで通信費が高かったわけですが、なぜ高額な機器を買い続けたのかというと、各ソフトウェアは専用のハードウェア上のみでしか動作しなかったのです。

ハードウェアとソフトウェアの関係を簡単にイメージしやすいのは「ゲーム」だと思いますので、例をあげますね。
例えば、PS4のソフトをWii Uでプレイすることはできませんよね?
PS4で使いたいソフトがあれば、PS4というハードを買わないといけないです。
そこで、
どんなゲームソフトでも遊べる夢のハードがあったら嬉しくないですか?
お気づきですか?
そうです、仮想化というのは、簡単に言えばそういうことです。
話しを戻しますと、
既存の携帯電話会社もネットワークの一部分だけ仮想化していたりはするものの、使いたい機能の多くは専用ハードで実現しています。
しかし楽天モバイルは、アンテナなど物理的な機器が必要な部分を除く、全てのネットワーク設備を仮想化し、仮想化を利用したソフトで、使いたい機能を実現できるようにしたのです。

楽天モバイルは、この完全仮想化ネットワークによって、コスト面で大きなアドバンテージを2つ持っています。
まず、基地局のアンテナ設備一式が20kg程度に収めらており、設置に必要な人員が大幅に減っていること。
もう一つは、アップデートしたり、バグを修正したりする場合、直接各地の専用ハードを設定する必要などなく、遠隔で自動的にプログラムを配布することでセットアップすることが出来るようになっていること。
他にもいくつかありますが、完全仮想化ネットワークの利点によって、月額2,980円が実現されている、というわけですね。
逆にいうと、他MNO3社が同じ価格設定するには、ゼロから体制を見直さない限り難しい、ということになります。
まとめ
難しいお話しが多かったかと思いますので、重要なポイントを最後にまとめさせて頂きます。
- 他MNOと目的が違う
- 完全仮想化ネットワーク
楽天は、「楽天市場」というAmazonに次ぐEC通販サービス、「楽天カード」や「楽天Edy」などの金融関連サービスを中心とした「楽天経済圏」で大きな成功を収めています。
そのため、他の大手MNOと違い、モバイルサービス単体での利益は目的外になるのでしょう、ということですね。
また、世界初の完全仮想化ネットワークによって
- アンテナ設置費が安い
- メンテナンス費が安い
という大きなコストアドバンテージを得られています。
楽天モバイルは全世界のMNOの中でも非常に革新的な仕組みでサービスを提供しています。
こういったサービスには必ずトラブルは起こると思います。
何かが始まった時はそういうものです。それでも、楽天モバイルを利用することで受けられるメリットは本当に大きいと思います!